皆さんこんにちはmasa BLIK ito(まさぶりっくいとう)です。(@masabliks)
一般的に生成AIと呼ばれている大規模言語モデル(LLM)の急速な発展により、Web上の情報のあり方は不可逆的な変化を遂げています。 「検索」から「対話」へとユーザー体験が移行する中で、旧来のテキストメディアであるブログの役割は縮小すると予測されていました。
しかし、長期間更新を停止していたぼくのブログのアクセスは実際増えていました。
これは一般的な予測とは異なる挙動(アクセス増)を示しています。
今回は、この現象を感情的に捉えるのではなく、「AIによる確率的な回答」と「人間による身体的な検証」の役割分担(分化)という観点から、冷静に分析・考察します。
目次
アクセスデータから読み解く「情報の棲み分け」
更新停止期間におけるPV増加の要因を分解すると、AIと人間の情報の「質的な違い」が浮き彫りになります。
コンテキスト(文脈)の同期ズレ
最近のあるミュージシャン関係の記事のアクセスが急増したことについて。
現在の生成AIは、膨大な過去データから「平均的な回答」を生成することには長けていますが、「特定の時点(2023年1月など)における機材変更の意図」といった、時間軸と文脈が複雑に絡み合う事象の解像度には、まだ課題が残ると推測されます。
最新のイベントと過去のアーカイブ(記事)がリンクした際に発生するアクセスは、AIがまだ完全に代替できていない「文脈の補完」をユーザーが求めている可能性があります。
「解」ではなく「視点」への回帰
スペックや発売日といった「確定情報(Fact)」の検索需要は、間違いなくAIチャットへと移行しています。
一方で、当ブログで閲覧数が多いのは、機材に対する「考察」や「偏愛」を含んだ記事です。これは、ユーザーが求めているものが「正解」ではなく、「一人のプレイヤーがどのようなフィルターを通してその機材を見たか」という、再現性の低い(=人間的な)視点にあることを示唆しています。
今後のAIの発展と、残される「身体性」の価値
AI技術は現在進行系で進化しており、近い将来、人間の「感性」に近い文章を出力する可能性も否定できません。
しかし、出力結果がどれほど人間に近づいたとしても、構造的に代替困難な領域が存在します。それが「身体性」です。
シミュレーションと実証実験の差異
AIは、回路図や過去のレビューデータから「このFuzzはボリュームを絞るとクリーンになる」と出力することは可能です。 しかし、それは確率的な予測に過ぎません。
- AIの出力: データに基づく「論理的な予測」
- ブロガーの出力: 物理的な実機を用いた「実証実験の結果」
科学実験において、シミュレーションと実実験が両輪であるのと同様に、AIの予測に対し、人間が実機で検証(プラグイン)し、その際の「手触り」や「不確定な挙動」を記録すること。このプロセス自体に、情報の「担保」としての価値が生じます。
「ノイズ」としての信頼性
人間が執筆する場合、体調や環境、個人の好みといったバイアス(ノイズ)が混入します。 従来、これは情報の不純物と見なされてきましたが、AIが「均質な正解」を量産する時代においては、この「偏り」こそが、その情報が人間によって検証されたことの証明(Proof of Work)として機能する可能性があります。
検索エンジン評価(E-E-A-T)の再解釈
Googleが掲げるE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)についても、AI時代に即した再定義が必要です。
Experience(経験)の物理的証明
「経験」とは、単なる知識の蓄積ではなく、物理世界との相互作用を指します。 「ライブハウスの電圧低下で音が変わった」「湿気でネックが動いた」といった、物理的な制約を受けたトラブルシューティングの記録は、デジタルネイティブなAIが学習データとして取り込むことはできても、実体験として語ることは構造的に不可能です。
Trustworthiness(信頼性)とネガティブデータ
AIは基本的に、ユーザーの意図に沿った「役に立つ(ポジティブな)」回答を生成する傾向にあります。 そのため、書き手が意図的に「扱いにくさ」や「欠点」を論理的に指摘する行為は、AIとの差別化において重要な意味を持ちます。
完璧ではないデータを提示することが、逆説的に情報の信頼性を高めるというパラドックスが、ここには存在します。
動画とテキストのメディア特性比較
YouTube等の動画メディアが隆盛を極める中、テキストメディアの優位性は「情報のスキャン速度」にあります。
動画は時間軸に拘束されるシーケンシャルなメディアですが、テキストはランダムアクセスが可能です。 思考の整理や、特定の情報の再確認において、テキストは依然として高い効率性を誇ります。これは「古い・新しい」の問題ではなく、情報の「受容フォーマットの違い」に過ぎません。
結論:並走する二つの知性
今後のWebメディアにおいて、AIと人間は敵対するものではなく、異なるレイヤーで情報を処理する存在となります。
- AI: 既知の情報の統合、要約、平均値の提示。
- 人間: 未知の体験の言語化、物理的な検証、バイアスの提示。
我々ブロガーは、AIの進化を恐れる必要も、過度に軽視する必要もありません。 AIを「優秀な助手(Co-pilot)」として活用しつつ、人間は人間しか持ち得ない「肉体」を通した検証結果を、淡々とアーカイブしていく。 その論理的な役割分担こそが、これからの発信活動における最適解であると考えています。
