皆さんこんにちはmasa BLIK ito(まさぶりっくいとう)です。(@masabliks)
2026年のリバーブ・ペダルは「残響を足す」という本来の目的によりそうものもあれば、
楽器の一部として「空間そのものを演奏する」デバイスも進化しています。
2026年のトレンドは明確に「デュアル・エンジン化」と「非現実的空間の生成」にあります。
今回は現場で選ぶべきスタンダードから、創作意欲を刺激する異端のモデルまでを分析します。
目次
2026年の技術的特異点:DSPの進化がもたらしたもの
今年のリバーブ市場を語る上で避けて通れないのが、処理能力の飛躍的な向上です。
従来のSHARCプロセッサから、より高速なARMベースのTri-Coreプロセッサへの移行が進みました。
これにより、以下の機能がペダルサイズで標準化しつつあります。
- インパルス・レスポンス(IR)のリアルタイム処理
- 2つの異なるリバーブを同時使用するデュアル・アーキテクチャ
- 物理的にありえない「無限の空間」の高解像度生成
かつてラックマウントでしか成し得なかった演算が、足元で完結する時代です。
スタンダードの刷新と高機能化
プロフェッショナルな現場で「基準」となるモデルも世代交代を果たしました。
Strymon BigSky MX
10年の時を経て刷新された、デジタル・リバーブの絶対王者です。 心臓部には800MHz駆動のTri-Core ARMプロセッサを搭載。
前作との決定的な違いは、圧倒的な演算余裕による「デュアル・エンジン」の実装です。
スペック特徴
- 800MHz Tri-Core ARMプロセッサ
- 2系統の同時使用リバーブ(直列/並列/Split)
- 最大10秒のIRキャプチャ・ロード対応
- 高視認性大型OLEDディスプレイ
分析
音の消え際(ディケイ)のグラデーションが驚異的に滑らかです。
デジタルの粒子感が皆無で、IR機能によりヴィンテージ機材の空気感すらキャプチャ可能です。
ただし機能が膨大すぎるため、単に「少し響きが欲しい」だけのプレイヤーにはオーバースペックとなる懸念があります。
価格もハイエンド帯であり、導入には明確な目的意識が必要です。
Boss RV-200
機能性と実用性のスイートスポットを突いた現場のワークホース。
RV-500のアルゴリズムを継承しつつ、ボードに収まりやすいサイズ感を実現しています。
スペック特徴
- 32bit浮動小数点演算 / 96kHzサンプリング
- 12種類のモード(Arpverb、Slowverb含む)
- 直感的なノブ操作と127のユーザーメモリー
- 密度(Density)パラメータによる壁材の質感調整
分析
32bit処理により、ドライ音(原音)の鮮度が極めて高いのが特徴です。
メニュー階層に潜らずとも主要なパラメータにアクセスできる物理UIは、ライブでの即応性に優れます。
BigSkyほどのシネマティックな広がりは求められませんが、バンドアンサンブル内での「抜け」と「馴染み」のバランスはBossならではの完成度です。
空間の再定義:NucleoとMonk Echo
2025年後半から登場したこれらのモデルは、リバーブに「物語」や「有機性」を持ち込みました。
Cornerstone Nucleo
イタリアのCornerstoneとPaul Davidsのコラボレーションモデル。
実際の原子力発電施設のインパルス・レスポンスを解析し、アルゴリズム化した異色作です。
スペック特徴
- 廃炉となった原発施設の音響特性をモデリング
- 3本のフェーダー(MOD, AIR, FLUX)による直感操作
- USB-Cオーディオインターフェース機能内蔵
- 最大90秒の超ロング・ディケイ(Reactorモード)
分析
コンクリートと金属で構成された巨大空間特有の、中域が削れた冷徹な響きが特徴です。
ペダル自体がオーディオI/Fになる点は、宅録派にとって強力な武器となります。
特定の空間特性に特化しているため、汎用的なホールリバーブを求める場合には向きません。
Mentha Works Monk Echo
「声」を持つリバーブとしてNAMM 2026で話題をさらったモデル
残響にフォルマント・フィルターをかけることで、修道士(Monk)の合唱のような響きを生成します。
スペック特徴
- Monk Voiceテクノロジー(人声模倣フィルター)
- 8x8 ドット・マトリクスLEDディスプレイ
- シルキーで拡散性の高いリバーブ・エンジン
分析
Shimmer(オクターブ上)とは異なる、中域にフォーカスした暖かみのある倍音が付加されます。
視覚的なLEDアニメーションも含め、インスピレーションを刺激するツールです。
楽曲のキーやアレンジを選ぶ個性的なサウンドであり、飛び道具としての運用が主になるでしょう。
オルタナティブな選択肢:テクスチャ・ジェネレーター
「きれいな空間」ではなく、音そのものを変質させる実験的なモデルも注目に値します。
EAE Prismatic Wall
物理モデリングによる「共鳴弦」シミュレーター。
リバーブというよりは、巨大なピアノの中にいるような共鳴音を作り出します。
キーに合わせてチューニングすることで、ドローン生成機として機能します。
DBA Infinity Verb
「無限」をテーマにしたアンビエント・リバーブ。
残響をキャプチャしてループさせる機能があり、一人で重厚なサウンドスケープを構築可能です。
制御不能なカオスを生み出すため、一般的なポップスでの運用は困難です。
まとめ
2026年のリバーブ・ペダルは、スペック競争を超え「体験の質」を問うフェーズに入りました。
各モデルの推奨ユーザー
- Strymon BigSky MX: 妥協なき音質と多機能性を求めるスタジオ/プロユース。
- Boss RV-200: ライブでの操作性とボードの省スペース化を重視する実戦派。
- Cornerstone Nucleo: 冷たく広大な空間表現と、PCとの連携を求める宅録ギタリスト。
- Alternative系: 既存の音楽理論から逸脱したテクスチャを求めるサウンドデザイナー。
まずは、自分の足元のボードを見直し、求めているのが「補正としての残響」なのか「創造的なテクスチャ」なのかを定義することから始めてみてください。
