少し前にThreadsにこんな投稿をしたところ、思いがけず反響をいただきました。
投稿では「刺さらなくなった→視点が変わって楽しくなった」という流れを書いたのですが、Threadsのぶら下がり構造が読みづらく、解決の部分が伝わらなかった方も多かったようです。
この記事では、その「どう変わったか」の実践的な部分をちゃんと書きます。
「最近の音楽、なんか合わないな」という感覚、誰でも一度はあると思います。
これ、原因がわかれば解決します。そして原因は思っているよりシンプルです。
この記事では、ギタリスト兼ブロガーとして音楽を作る立場から、「刺さらない」が起きる理由と、それを知った後の聴き方の変え方を具体的に書きます。
目次
結論:あなたの耳は壊れていない
「最近の音楽が刺さらない」は、耳の劣化でも老化でもありません。
ターゲットが違うだけです。
Spotifyや Apple Musicのデータ活用が当たり前になったことで、音楽のマーケティング精度は以前より格段に上がっています。今のヒット曲は「なんとなく万人受け」を狙うより、特定のリスナー層に深く刺さる設計になっているものが多い。
あなたがそのターゲット層から外れれば、刺さらないのは当然です。
「刺さらない」が起きる3つの理由
理由1. ストリーミング時代にターゲット精度が上がった
アーティスト側は今、リスナーの年代・性別・再生シーンまでデータで把握できます。プレイリスト文化の中で生き残るために、15秒以内にサビを持ってくる、特定の感情ワードを歌詞に入れるといった設計が常識になっています。
その設計の「的」から外れたら、刺さらなくて当然です。
理由2. 自分の聴き方が成熟している
音楽をたくさん聴いてきた人ほど、「表面的な心地よさ」では満足しにくくなります。コード進行、アレンジの意図、歌詞の構造のようなところに自然と耳がいく。
これは劣化ではなく成熟です。同じ理由で、映画評論家は普通の映画で泣きにくくなります。
理由3. 「初めて聴く」体験は再現できない
10代・20代の人が今の音楽で感じる「初めて聴く新鮮さ」は、ある程度聴いてきた人間には再現できない部分があります。感動と「新しさ」はセットのことが多い。
あなたの「刺さらない」は、その分だけ音楽と深く付き合ってきた証でもあります。
ミュージシャンが実際に使っている、刺さらない曲の楽しみ方
この3つの理由がわかった上で、聴き方を少し変えるだけで世界が変わります。
聴き方1. 「誰に向けて作ったか」を推理する
曲を聴きながら、こういう問いを立ててみてください。
- このサビが刺さるのは何歳の人だろう
- どんなシーンで流れたら一番映える?(ドライブ?カラオケ?深夜の一人飲み?)
- この歌詞の「君」や「あなた」は、どんな人を想定している?
「自分に向けてないから刺さらない」という評価が、「このターゲットにはみごとに刺さっている」という観察に変わります。評価の軸が「好き嫌い」から「設計として機能しているか」に広がる。
これをやっていると、刺さらない曲でも「誰かにとっての名曲」として聴こえるようになります。
聴き方2. ヒットの構造を分解する
ミュージシャンが持っている最大の武器を使います。
それは「音楽の構造を分解できる耳」です。
ヒットしている曲があったら、こういう視点で聴いてみてください。
- イントロは何秒? サビが来るまでどれくらいかかる?
- 繰り返されるフレーズは何か。なぜそれを繰り返す?
- AメロとBメロで、テンションの上下はどう設計されている?
- 歌詞の言葉は具体的か抽象的か。その使い分けの意図は?
作曲・演奏の経験がある人は、ここに自分の知識を直接活かせます。「なぜこれが売れているか」を音楽家の目線で読むのは、純粋に面白い知的作業です。
聴き方3. 「自分が作るとしたら」という問いを持つ
分析した構造を、自分の音楽制作に接続する聴き方です。
「このコード進行を自分のスタイルでやったらどうなる」「このアレンジのアプローチ、自分の曲に借りられる部分はある」という問いを持ちながら聴く。
ひとつだけはっきり言っておきたいことがあります。
この視点を「採用する・しない」は、あなたが決めることです。
誰に向けて作るかも、どんなサウンドにするかも、それはアーティストとして完全にあなた自身の判断です。この聴き方はあなたの音楽の方向性を変えるためのものではなく、「知っている人間として、あえて選ぶ」という密度を上げるための視点です。
知らずにやらないのと、知った上であえてやらないのでは、作品の奥行きが違います。
まとめ:「ジャッジモード」から「観察モード」に切り替える
「刺さらない」と感じる瞬間は、「自分に合わない」というジャッジをしています。
そこに「誰に向けて作っているのか」という観察の視点を一枚加えるだけで、聴き方のレイヤーが増えます。
ミュージシャンがもともと持っている「構造を読む耳」は、この観察モードと非常に相性がいい。むしろ、この楽しみ方はミュージシャンにしかできない部分があります。
感情の旅として読みたい方へ
この記事は「どう変えるか」の実践編です。
自分がこの視点に辿り着くまでの過程、感情の変化、そして「ターゲット外だった」と気づいた瞬間の話は、noteの方に書いています。こちらはもっと個人的な内容です。
