皆さんこんにちはmasa BLIK ito(まさぶりっくいとう)です。(@masabliks)
読んだ本の感想をまとめるブログは久々になってしまいました…
ホラー、怪談、グロなんかに定評がある平山夢明さんの「八月のくず」を読んだのでその感想を。
平山夢明さんらしい「痛ましい描写」と絶妙な「ロマンス」のバランスがポップさをもって把握できるので、読みやすいといっても良いバランスが取れた短編集でした。
レビュー時に少しネタバレが入るので未読の方はご注意を。
目次
平山夢明
「東京伝説」シリーズで霊的な現象ではなく、「人」が起こしたり巻き込まれたりした怖い話で騒然となった平山夢明さん。
取材に基づくこれらのシリーズの他にも長編も読ませてくれるものが多いです。
「ダイナー」は藤原竜也と蜷川実花監督で映画化もされました。
映画はまったく見なくてよいですが、小説は独特などことなく日本ぽくないのに日本であるような言い回しや設定で非常に面白いです。
後述しますが、平山作品は抗えない不条理や暴力やそれに使ってしまうダメ人間の描き方がエグみをもって横隔膜を突き抜けていきます。
そのわりにたまに希望があったりして、くせにさせられます。
「八月のくず」、「ダイナー」以外におすすめは「独白するユニバーサル横メルカトル」、「他人事」、「メルキオールの惨劇」など。
八月のくず
10の物語の短編集です。
- 八月のくず
- いつか聴こえなくなる唄
- 幻画の女
- 餌江。は怪談
- 祈り
- 箸魔
- ふじみのちょんぼ
- ≒0.04%
- あるグレートマザーの告白
- 裏キオスクストック発、最終便
平山夢明作品の特徴として
- 清々しいまでのクズ人間
- 暴力とグロ描写
- ひとさじの救い
- 気になるタイトル
があるのですが、今回は「暴力とグロ描写」の割合が減って、相乗的に「救い」的な部分も少ない印象です。
相関的に上記の要素から「八月のくず」全体からポップさを感じるようになっているようです。
しかし、一つ一つのタイトルの毒々しさと、その後を想像すると実は結構毒がかなりあったりと楽しめる内容になっているのは相変わらずだなーと思います。
八月のくず
不幸な家庭に生まれたが母親譲りの美貌を持つ頭が悪いコズエと、そのコズエにタカるホスト崩れの男の話。
借金なのかコズエが宿した子供のためか、男はコズエを殺して埋めてしまうのですがその後、因果応報とも理不尽とも捉えられる現象によってコズエに復讐されます。
殺すシーンの金槌で叩いてから、車で轢き続けて埋めやすく(?)するシーンはザ・平山夢明。
男が延々と繰り返す埋める作業に読んでる側も疲労感を覚えるような書き方は「平山夢明節」ですね~
こういう流れはそれまでの平山作品でもあったのですが、超常現象的に解決される中盤から終盤はあまりみなかったかも。
平山作品は「理不尽系」もあるのですが、意外と悪い人間が成敗される物語も多いです。
いつか聴こえなくなる唄
農園で「ノックス」という「ゴリラより3回りほど巨大で体毛がなく、1つ目の分厚いまぶたに覆われた瞳をもつ」種族を家畜として飼育している親子2人の話。
SF系の話です。
その上には「ファザー」という農園王がおり、主人公たち親子はこの「ファザー」の下働きとして働いている地球人です。
地球から様々な星へ出ていった人類が「惑星コス」で低い地位で労働者として働いており、さらにその下に「ノックス」という種族が隷属している形になります。
ノックスの子供と主人公の子供が意思疎通を図って種族を超えた絆を育んでいく…
という内容から最後は二重に大人や周りの都合に翻弄される子供、という結末になります。
ただ、裏側の優しさ(捉え方によっては残酷なんですが…)のようなものが母親からもたらされる物語です。
「八月のくず」短編集の中ではわりかし長めですね。
このあたりの残酷さの描き方と物語としての入り込まされ方はやっぱりすごいなーと思います。
幻画の女
最後に「天才脚本家・笠原和夫に捧ぐ」とあるので「仁義なき戦い」へのある種のオマージュであるかのような物語。
広島のヤクザたちと「殺し彫り」という見たものが狂い死んでしまう入れ墨を背中に持った女の話です。
この入れ墨を持った純子と昔付き合っていた壮三、兄弟分の朝男の3人が中心となって話が進んでいきます。
最後は以外にもファンタジーで終わるところが平山作品では結構珍しい、のですが、よく考えてみると「八月のくず」が今までの作品とはマイナーチェンジしたようなものが多いので実験的な作品なのかもです。
ちょっと肩透かし感があることもある作品。
餌江。は怪談
貧乏、虐待、物乞いも平山作品でよく出てくるキーワード。
主人公餌江。は。までが名前だし、登場人物の語り口も全部ふざけています。
絶望的な状況ながら餌江。は強く、ろくでなしな父親を救おうとして動きますが結局は大人たちや状況に翻弄され父親から恨まれる結果に。
上記のようなふざけた語り口でライトに読めていきますが、内容を噛み砕きながら読むと結構ヘヴィな状況。
幽霊か幻覚か現実かわからないホームレスにつきまとわれる餌江。とだんだん狂っていく父親が仕事をし始めた屋台が実は…
という内容ですが、餌江。が屋台にたどり着くとそこで出てきた煮込み料理の気持ち悪さが結構ハイライトでした。
ねずみ…をずるりずるり……
ヘヴィな状況ながら、餌江。に悲壮感がなくザクっと終了されるラストでは結構スカッとします。
こういうライト目な平山夢明もいいな。
平山夢明「八月のくず」を読んだので読書感想文1 まとめ
思ったより各作品に対して長くなってしまったので、その2も書いてみたいと思います。
平山夢明がKindleでも読めるようになったので、手が伸ばしやすくなったんじゃないかなーと思います。
読みながら食事するのはおすすめしませんが…
その2はこちら!
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平山夢明「八月のくず」を読んだのでネタバレありのレビュー2
平山夢明「八月のくず」短編集を読んだのでレビュー2です
前半の圧倒的不条理感に比べ後半はファンタジー要素が多めな作品が多く
どっぷり平山ワールドに浸れます
なんかメタル聴いた感覚と似た読後感です続きを見る