皆さんこんにちは、masa BLIK ito(まさぶりっくいとう)です。(@masabliks)
PRSのDGTといえば、David Grissomの名前を冠した「弾き手の表現がそのまま音になる」シグネチャーモデルとして長年愛されてきたわけですが。
そのDGTにセミホロウ仕様が追加されて、しかも2024年・2025年と限定生産されてきたものが、ついに2026年からCoreシリーズの常設ラインナップに昇格することになりました。
これは結構な事件です。PRSがそれだけ手応えを掴んだということですね。
今回はこの「PRS DGT Semi-Hollow」のスペックとサウンドの方向性、そしてDavid Grissom本人のリグまで含めて、丸ごと掘り下げていきます。
さあいってみましょう。
目次
PRS DGT Semi-Hollow 機材スペック一覧
ギター本体
- PRS DGT Semi-Hollow(2026年Coreシリーズ常設化)
- ボディ:マホガニー+メイプルトップ、シングルFホールのセミホロウ構造
- ネック:マホガニー(DGTネックシェイプ)
- 指板:ローズウッド、22フレット、10インチRラディアス、ジャンボフレット
- スケール:25インチ
- ブリッジ:PRS Patented Gen II Tremolo
- ペグ:Phase III ロッキングペグ(フェイクボーン・ボタン)
- ピックアップ:DGTトレブル&ベース(ヴィンテージPAFボイス、カバード)
- コントロール:2ボリューム+プッシュプル・トーン(コイルタップ)、3wayトグル
- フィニッシュ:ハイグロス・ニトロセルロース
- 2026年カラー:チャコール、マッカーティ・タバコサンバースト、マッカーティサンバースト、ゴールドトップ、フェイデッド・ブルージーン、ダークチェリーサンバースト、タイガーアイ
ソリッド版との比較対象
- PRS DGT(ソリッド版/2023モデル以降のCore)
David Grissom本人の周辺機材(参考)
- PRS DGT 30 / DGT 50(Doug Sewell設計のシグネチャーアンプ)
- PRS DGT 15(より小型な15W単チャンネル、EL84×2)
- Xotic EP Booster(DIPはVintageモード)
- Jetter Gear David Grissom Signature
- Psionic Audio Telos(オーバードライブ)
- Strymon El Capistan(ディレイ/バッファード接続)
DGTシリーズの成り立ちを軽くおさらい
さて、DGTを語るならまずここからですね。
DGTというモデルはもともと、David Grissomが自分専用のオーダーとしてMcCartyベースに「ネックシェイプを変えて、ノブ配置を変えて、ピックアップを巻き直して」と一台ずつカスタムしていたのが原型なんですよね。
それを正式なシグネチャーモデルとしてラインナップ化したのが2008年。
特徴を一言でまとめると、「タッチレスポンス特化のヴィンテージ系PRS」という立ち位置になります。Custom 24のようなモダン路線でもなく、McCartyほど枯れすぎてもいない、その中間でレスポンス重視の音作りに振った機種ですね。
肝になっているのが、Grissom本人が「40セット以上のピックアップをA/Bしてやっと辿り着いた」と語っている専用設計のDGTピックアップ。古い335の音を狙ったというだけあって、PAF系の中でもしっとり寄り、それでいて立ち上がりは鈍くないバランスになっています。
その音作りの土台に、ソリッドではなくセミホロウのボディが組み合わさったらどうなるか。それが今回のDGT Semi-Hollowというわけです。
2026年Coreシリーズ常設化が意味すること
ここはちょっと重要な話なのでセクションを分けますね。
PRS DGT Semi-Hollowは、2024年に初めて200本の限定生産モデルとして登場しました。続く2025年にも別カラーで限定リリース、そして2026年から「Core」シリーズの常設ラインナップに昇格、という流れです。
PRSのCoreというのは、メリーランド本社で組まれる本国生産ラインの中核で、ここに常設されるということは「いつでも注文できる定番モデルになった」ことを意味します。限定で出して様子を見て、反響と完成度を見極めてから常設化する、というPRSお得意の流れですね。
逆に言うと、限定二回分で「これは常設化していい」と判断されるだけの手応えがあったということ。Grissom本人と社内の音作りチームが、DGTのキャラを保ったままセミホロウ化する設計に納得したからこその昇格と捉えていいと思います。
ここまで来ると単なる「派生バリエ」ではなく、DGTという家系のもう一つの本流として育てていく前提のモデル、という見方ができますね。
ボディ構造:シングルFホールのセミホロウ
さあここから具体的なスペックの話に入っていきましょー。
DGT Semi-Hollowのボディは、マホガニーバック+メイプルトップという王道PRS構成。そこに、トレブル側にひとつだけFホールが開けられたシングルFホール仕様のセミホロウ加工が施されています。
PRSのセミホロウは、内部を完全に空洞化するのではなく、サウンドブロックを残したチェンバリング構造になっているのがポイント。これによって、フルアコ的な広がりではなく「ソリッドの芯の上にエアが乗る」あの独特の立体感が出ます。
GrissomがGuitar Worldのインタビューで語っていたのが、「Fホール化は、自分の手持ちのDGTに寄り添ってくれる存在として、論理的な次のステップだった」という言葉。
これがけっこう本質を突いていて、DGT Semi-Hollowはあくまでも「DGT」。完全にホロウ寄りに振り切ったわけではなく、ソリッドDGTと並列で使えるバランスを狙って設計されている、というのが大事なところですね。
実際、Grissom自身が「ソリッドより少しトップエンドが暖かく、ローはほんの少し控えめになる」「フィードバックがコントロールしやすい」と表現していて、この絶妙な「少しだけ」感がDGTというモデルらしさそのものだったりします。
ネック仕様:DGTネックシェイプの正体
ネックは引き続きマホガニー、指板はローズウッド、22フレットでスケールは25インチ。フレットはジャンボサイズです。
そしてここが地味に大事なんですが、DGTのネックシェイプは「Wide-Fatをほんのり薄くして、より人の手に馴染む形に再カーブしたもの」と公式に説明されています。
実際の数値で見ると、1/2フレット位置で27/32インチ、12 1/2フレット位置で61/64インチ、ナット幅1 21/32インチ、ボディジョイント幅2 7/32インチ。Wide-Fatほどのボリューム感はないものの、Pattern ThinやPattern Regularよりはしっかり肉付きがある、というポジションですね。
これが「弾いていて疲れない、でも音圧はちゃんと出る」というDGTの肝になっています。指板Rは10インチで、いわゆるレギュラーな弾きやすさ。ヴィンテージ系の7.25Rでもなく、シュレッダー向けの12〜16Rでもない、ちょうどいいところに収まっています。
握った瞬間の安心感がたぶんすごいんでしょうね。Grissomが何十年も愛用しているネックシェイプというのは、それだけで説得力があります。
ピックアップとコントロール:DGTヴィンテージボイス+コイルタップ
ピックアップは引き続き、ソリッド版と同じDGTトレブル/DGTベースのカバードハムバッカーが搭載されます。
このピックアップ、Grissom本人とPaul Reed Smithが1年かけて40セット以上のピックアップをA/Bして決めたという、なかなかに執念の塊。狙いはGrissomが持っていた古い335に近い、PAF系のヴィンテージサウンドです。
組み合わさるコントロール部もDGTならではの構成で、ピックアップごとに独立したボリュームノブが2つ、共通のトーンノブが1つ、そしてトーンノブをプルすると両方のピックアップが同時にコイルタップされる仕組み。
「2ボリューム+1トーン+プッシュプル」の構成は、Les Paul的な独立ボリューム操作と、Strat的なシングルコイルサウンドの両方を一台で行き来できる、という思想。クリーンでトーンを引っ張れば一気に「シャラン」としたシングルっぽい音域に飛べますし、ハムに戻せばゴリッとした太さに戻ってくる。
これがセミホロウボディと組み合わさることで、コイルタップ時のシングルライクな音にも空気感が乗って、よりFenderっぽい奥行きが出てくるはず。逆にハム側は、ソリッド版より少しだけ角が取れた印象になるイメージですね。
ブリッジ・ペグ・フィニッシュ周り
ブリッジはPRSお馴染みのPatented Gen IIトレモロ。
PRSのトレモロは「ヴィンテージスタイルなのに恐ろしくチューニングが安定する」ことで有名で、Grissom本人もアームを多用するプレイヤーなので、このブリッジは外せない要素ですね。アームをクイっと入れた後にピタッと音程が戻ってくる感じは、もうPRSの代名詞と言っていいレベル。
ペグはPhase IIIのロッキングチューナーで、ボタン部分にはフェイクボーン素材が使われていて見た目もちょっと粋です。
フィニッシュはハイグロスのニトロセルロース。ニトロ仕上げにしているのは音響的な理由ももちろんあるんですが、長年弾いていくうちに馴染んでいく経年変化を含めて楽しめるようにという狙いもあるんでしょうね。
2026年カラーは7色展開で、
- チャコール
- マッカーティ・タバコサンバースト
- マッカーティサンバースト
- ゴールドトップ
- フェイデッド・ブルージーン
- ダークチェリーサンバースト
- タイガーアイ
という構成。マッカーティ系のサンバーストが2種類あるのが渋いですね。ゴールドトップなんかは見た目的にDGTの「ヴィンテージ系」キャラと完全にマッチしています。
サウンドの方向性:ソリッド版との違いをどう捉えるか
ここが気になるところですよね。
Grissom本人の表現と各所の解説を照らし合わせていくと、ソリッドDGTとの違いは大きく3つに整理できます。
1つ目、トップエンドが少しだけ暖かくなる。ソリッド版のシャキッとした「キン」とした立ち上がりが、セミホロウでは少し丸みを帯びて「シャラッ」とした方向にシフトします。
2つ目、ローエンドが気持ち控えめになる。ここは意外かもしれません。普通セミホロウは低音が出るイメージですが、PRSのチェンバリング設計ではむしろ「ソリッドより少しタイトに整理される」傾向になるみたいですね。
3つ目、フィードバックがコントロールしやすくなる。完全なホロウだとライブで歪ませると暴れがちですが、内部のサウンドブロックがそれを抑えてくれる。歪ませたときに気持ちよく歌う領域に持っていきやすい、というイメージです。
だからソリッド版と並べて使うとどちらか一方が代替になるというより、用途で住み分けができる関係性になる。Grissom本人が「自分のストックDGTのコンパニオン(伴侶)」と表現しているのは、まさにこの感覚なんだろうなと。
David Grissom本人のリグ:DGTを最大化する周辺機材
せっかくなのでGrissom本人のセットアップも軽く触れておきますね。DGT Semi-Hollowの音作りをイメージするうえで、本人がどんなアンプとペダルで鳴らしているかは結構なヒントになるので。
アンプ:PRS DGTシリーズ
GrissomはPRSのアンプ設計の重鎮Doug Sewellと組んで、自分専用のアンプを長年開発してきました。
その第一弾がDGT 30とDGT 50。「ヴィンテージMarshallとVoxのいいとこ取り」をコンセプトにしたモデルで、クリーンの艶と歪んだときのコンプレッション感が共存するキャラクター。
そして近年リリースされたのがPRS DGT 15。15Wの単チャンネル機で、EL84を2発積んだ構成。「DGT 30の小型版」というよりは、「ブラックパネル系Fenderの艶」と「AC15のパンチ」を一台に詰め込んだ、独立したキャラの一台に仕上がっているみたいです。
レコーディングでもクラブギグでも持ち出せるサイズ感で、しかもDGTシグネチャーピックアップとの相性で設計されているという、まさに専用設計のアンプ。DGT Semi-Hollowを家やスタジオでガッツリ鳴らしたいなら、本来はこのDGT 15あたりが最高のパートナーだったりします。
ペダル:シンプルかつ意図的
Grissomのペダル選びはけっこうシンプルで、基本的には「アンプの良さを邪魔しないこと」を最優先しているのが伝わってきます。
常用しているのがXotic EP Booster。これは内部のDIPスイッチをVintageモードに切り替えて、トップエンドを足さずに「太さだけ」を持ち上げる使い方。
オーバードライブ系では自身のシグネチャーであるJetter David Grissom Signatureに加え、Psionic Audio Telosをよく使っているそう。Telosはチューブスクリーマー系の血統で、ミッドにフォーカスがありつつ嫌味のない歪み方をするタイプ。
ディレイはStrymon El Capistanをチェーンの最後にバッファード接続で配置。デジタル臭を出さずに、テープエコー感を残しながらラインの整合性を整えるという、これも「アンプの音を活かすため」の選び方ですね。
DGT Semi-Hollowのキャラを考えると、この「アンプを邪魔しない最小構成」というアプローチがすごく似合うはずです。空間系で広げるよりも、まず素のアンプで鳴らしたくなる種類のギターだと思います。
他のPRSセミホロウとの位置づけ
PRSのセミホロウ/ホロウラインナップって、実は意外と種類があるんですよね。
McCarty 594 Hollowbody II、Hollowbody II Piezo、SE Hollowbody II、そしてこのDGT Semi-Hollow。それぞれキャラがちゃんと違っていて、
- McCarty 594系:枯れた58年的なロー寄りのトーン、24.594インチスケール
- Hollowbody II:完全なホロウ+メイプルトップ&バック、ジャズ寄りの広がり
- DGT Semi-Hollow:ソリッドDGTの延長線上、25インチで弾き心地は完全DGT
という棲み分け。
もし「ソリッドDGTのレスポンスは大好きだけど、もう少しエアが欲しい」という感覚を持っているプレイヤーがいるなら、McCarty 594やHollowbody IIに行くより、間違いなくDGT Semi-Hollowに行った方が満足度が高いはずです。
逆に、DGTのあの「右手のニュアンスがそのまま増幅される感じ」が苦手な人には、たぶんDGT Semi-Hollowも合わない。あくまでDGT本筋の延長線にある一台、というのが大前提ですね。
どんなプレイヤーに刺さるモデルか
整理しておきますね。
DGT Semi-Hollowが特に向いているのは、
- ブルース・カントリー・ルーツ系のギタリストでハム系の音が好きな人
- ピッキングのニュアンスで音色を作るタイプのプレイヤー
- ヴィンテージ335系のあのレスポンスが好きだけど、335そのものは大きすぎる人
- ソリッドDGTを既に持っていて、二台目で別の表情が欲しい人
- アンプの音色にあまりペダルを足さず、ギター本体で世界観を作りたい人
逆に、ハイゲイン主体のメタル/ジェント系の用途には向いていません。あの帯域だとフィードバックのコントロールも難しくなりますし、そもそも狙う音域が違いすぎますね。
オールマイティに何でも一台で済ませたいなら、ソリッドDGTかCustom 24の方が無難。「DGT Semi-Hollowが欲しくなる人」というのは、すでに何本かギターを持っていて、「あえてこの帯域とレスポンスのために一台増やしたい」というフェーズにいる人だと思います。
まとめ:「定番化されたコンパニオン」という価値
PRS DGT Semi-Hollowの何が面白いかというと、限定で出したらきっちり手応えを掴んで、二回の限定生産を経てCore常設化までこぎ着けた、というその背景です。
PRSがCoreに昇格させるということは、それだけ「長く付き合える定番」として見極めたということ。これからDGT Semi-Hollowを買う人は、いつでも同じスペックでリオーダーできるし、長期的に部品供給やリペア体制も期待できる。これは限定モデルでは得られない安心感ですね。
そしてGrissom本人が「stock DGTのコンパニオン」と語っているように、これは単独で完結するモデルというより、ソリッドDGTと並べてはじめて真価を発揮する種類の一台。だからこそ「DGT沼の二歩目」として、すごくよくできた選択肢になっています。
DGTというモデル全体が持つ「弾き手の指の表情をまっすぐ拡声する」というキャラに、エアの広がりが乗るとどうなるか。ぼくはまだ実機を弾けていないのですが、想像するだけで弾き心地が良さそうですね。世界が変わりそう。
機会があれば一度、楽器店で弾き比べてみる価値は十分にあるモデルだと思います。
