皆さんこんにちは、masa BLIK ito(まさぶりっくいとう)です。(@masabliks)
Matteo Mancuso(マッテオ・マンクッソ)の演奏を初めて観たときの感想は「嘘だろ」でした。
ピックを使わないフィンガースタイルで、あの速度、あの正確性。
パット・メセニーもスティーヴ・ヴァイも度肝を抜かれたという話も、演奏を聴けば「そりゃそうだ」としか言えません。
で、さらにびっくりするのがリグの構成です。
完全デジタル、アンプなし、直でPA卓に送って、あの音を出しています。
今回はそんなマッテオの機材を、2026年現在の構成で徹底的に掘り下げていきます。
目次
Matteo Mancuso 使用機材一覧
ギター
- Yamaha Revstar Custom(メイン / DiMarzio PAF 36th Anniversary / 5way)
- Yamaha Pacifica Custom(サブ / DiMarzio Area 61, 68 / Vega-Trem)
デジタルリグ
- Line 6 Helix Floor(メインシステム)
- Line 6 Helix Stadium XL(大型会場用)
- Line 6 HX Stomp(バックアップ)
- Fractal Audio FM3(フライデイト・リグ)
特殊セッティング
- ナット付近のダンパー(共鳴抑制用消音材)
- Jensen IRを使ったキャビネットシミュレーション
- LowCut / HighCutを徹底したEQ設計
マッテオのサウンド哲学:手が先、機材は後
彼のサウンドの根幹にあるのは「手が全て」という考え方です。
シチリア島出身でクラシックギターの訓練を受けてきた彼は、右手のダイナミクスレンジが一般的なエレキギタリストとは比較にならないほど広い。
フォルティッシモからピアニッシモまで、右手の指先だけで全部のニュアンスを出してきます。
だから機材に求めるのは「自分の手の動きをそのまま正確に出力してくれること」。
余計なコンプレッションも色づけもいらない、入力に対して嘘をつかないシステムが理想なわけです。
「ライブもレコーディングも全部デジタルでいい。本物のアンプで出せてデジタルで出せない音はない」
ここまで言い切る人は少ないですし、実際にそのデジタルリグからあの音が出ている事実を前にすると、ぐうの音も出ません。
メインギター:Yamaha Revstar Custom
さて掘り下げていってみましょー。
ボディとネック
チャンバード加工(内部に空洞を設けた構造)を施したホンジュラスマホガニーボディに、フレイムメイプルトップ。
チャンバー加工のおかげで見た目の割に軽量で、生鳴りが豊かになります。
長時間弾いても疲れにくいのは、指弾き奏者としてはかなり重要なポイントでしょうね。
ネックはオーバルCシェイプのマホガニー、指板はパウフェロー、フレットはステンレスです。
ステンレスフレットは摩耗しにくいだけでなく、フレット表面の滑らかさが一定で、指弾きのときの弦とフレットの接触感が安定します。
ピック弾きよりも指弾きのほうがフレットへの感触がダイレクトに伝わるので、この違いは結構大きいです。
ピックアップ:DiMarzio PAF 36th Anniversary + 5wayスイッチ
彼のRevstarの最大の特徴がこのピックアップとスイッチングの構成。
普通のRevstarは3wayトグルスイッチですが、マッテオのカスタムは5wayブレードスイッチに変更されていて、コイルスプリット(タップ)が可能になっています。
ハムバッカーのフル出力から、シングルコイル的なキレのある音まで、ワンギターでかなりの幅をカバーできます。
PAF 36th Anniversaryというピックアップ自体がヴィンテージ系ハムバッカーの中でも出力控えめで、クリーンの分離感が非常に良い。
指弾きで速いパッセージを弾いたときに音が団子にならないのは、このピックアップの力も大きいですね。
ナット付近のダンパー
パっと見で「あれ何?」と思う小さな仕掛けが、ナット付近に設置された消音用のダンパーです。
指弾きで高速パッセージを弾くと、弾いていない開放弦が共鳴して「ぼわーん」とノイズになることがあります。
これを抑えるために、布やスポンジ系の素材をナット付近にそっと置いています。
地味ですけど、実はこれがないとフィンガースタイルのクリアさが一気に損なわれます。
タッピングやレガートを多用するプレイヤーにも参考になるテクニックです。
サブギター:Yamaha Pacifica Custom
Revstarがハムバッカーの太さを担うなら、パシフィカはシングルコイル的なキレを担当します。
DiMarzio Area 61や68というノイズレス設計のシングルコイルを搭載していて、ストラト系のクリスピーな質感を出しつつ、ステージで問題になりがちなハムノイズを排除しています。
Vega-Tremというトレモロシステムを採用していて、チューニングの安定性が通常のシンクロナイズドよりも優秀。
アーミングも滑らかで、アームを使うフレーズでもピッチがグネグネしません。
スタジオでのクリーントーン録音や、ストラト寄りのトーンが欲しい場面ではこちらに持ち替えるそうです。
デジタルシステム:HelixとFractalの使い分け
Line 6 Helix(メインリグ)
彼の中枢神経はHelix Floorです。
ライブでの運用スタイルがシンプルで、楽曲ごとに1プリセットという設計。
プリセットの中に4つのスナップショット(Clean / Chorus Clean / Crunch / Lead)が入っていて、足元のスイッチで瞬時に切り替えます。
アンプモデルは「US Deluxe Normal」(Fender Deluxe Reverb系)や「Matchstick」といった、クリーンが美しくてクランチのブレイクアップが自然なモデルを好んで使用しています。
ゴリゴリのハイゲインにはほぼ手を出さず、指のタッチでクリーンとドライブの境界を行き来する「エッジ・オブ・ブレイクアップ」な領域に音を置いている。
これが彼の指弾きの表現力を最大化するセッティングなんですね。
ステレオ出力でPAに直送するところも徹底していて、ライブ中にアンプキャビネットはゼロ。
完全にモニターやインイヤーで自分の音を確認しています。
大型の会場ではHelix Stadium XLを、バックアップとしてHX Stompを持参する体制です。
Fractal Audio FM3(フライリグ用)
飛行機での移動が多い海外ツアーでは、Helixの代わりにFractal Audio FM3を持ち出すこともあります。
FM3はHelixと比べて筐体がコンパクトで、スーツケースに入るサイズ。
DSP性能はフラクタルのお家芸で、複雑なルーティングもこなせます。
「音質を落とさずに荷物を減らしたい」という場面で、HelixとFM3を使い分けるスタイルが2026年現在の彼の完成形です。
IRの哲学:デジタルの「最終出口」を制するものがサウンドを制す
マッテオの音作りで最も時間をかけているのが、IR(インパルスレスポンス)の選定と帯域処理です。
JensenスピーカーのIRを好んで使っているそうで、Jensenは中高域にナチュラルな響きがあって、いわゆる「デジタル臭さ」が出にくいスピーカーとも言われています。
さらにLow CutとHigh Cutを丁寧に設定して、不要な超低域のモコモコや、耳に刺さる超高域をカットしています。
ここをサボるとどうなるかというと、自宅のモニター環境では良い音に聞こえるのに、ライブのPA出力でスカスカだったり耳障りだったりする。
マッテオのように直PA運用しているギタリストは、このIRと帯域処理が生命線です。
デジタルリグを使っていて「なんか薄いんだよな」と感じている方は、アンプモデルやエフェクトを変える前に、まずIRとEQの設定を見直してみることをおすすめします。
正直、音の最終出口であるIRの質と設定で印象の半分以上が決まると思います。
Matteo Mancusoの機材まとめ
マッテオ・マンクッソの機材で一番印象的なのは、「機材に頼っていない感じがするのに、機材の使いこなしが極めて高度」という矛盾のような事実です。
ピックを使わない、アンプも使わない、ペダルボードすらない。
でも出てくる音は、チューブアンプを鳴らし切っている人と遜色ないどころか、解像度ではむしろ上回っています。
それは結局「手の技術が圧倒的だから、機材はそれを邪魔しないものであればいい」ということなんでしょうね。
デジタルリグのポテンシャルを本気で知りたいなら、彼のライブを観てください。
概念が変わります。
