皆さんこんにちは、masa BLIK ito(まさぶりっくいとう)です。(@masabliks)
Blackstarがフロア型モデラー市場に本格参入してきました。ID:X Floorです。
英国のアンプメーカーとして確固たる地位を築いているBlackstarが、デジタル領域でどこまで勝負できるのか、かなり注目しています。
しかもこのID:X Floor、ただのマルチエフェクターではなく「コンポーネントレベルのデジタルモデリング」を採用していて、抵抗・コンデンサ・真空管ステージといったアンプの構成要素を個別にシミュレートしているそうです。
実際にアンプを設計・製造しているメーカーだからこそできるアプローチですよね。
今回はこのID:X Floorを掘り下げていこうと思います。
目次
Blackstar ID:X Floor スペック・機能サマリー
アンプモデル
- ギターアンプ 12モデル(Blackstarオリジナル6種 + Amptonアイコニック6種)
- ベースアンプ 3モデル
- アコースティック 2ボイス + アコースティックシミュレーター
エフェクト・テクノロジー
- 35種類以上のエフェクト内蔵(ファズ / OD / トレモロ / ピンポンディレイ / ワウ等)
- ISF(Infinite Shape Feature)搭載 ── Blackstar特許のアメリカン〜ブリティッシュ連続可変EQ
- CabRig IRテクノロジー ── ワールドクラスのIRキャプチャーベースのキャビネットシミュレーション
- パワーバルブレスポンス切替 ── EL84 / EL34 / 6L6 から選択可能
- 「In The Room」テクノロジー ── 実機アンプの目の前にいるような空気感を再現
操作・接続
- OLEDディスプレイ + ノブによるダイレクト操作
- 99パッチ保存
- ステレオXLRバランス出力 / ヘッドホン出力
- USB-Cオーディオインターフェース機能
- MIDI対応(モデルにより仕様差あり)
- 9V 500mA駆動 ── ペダルボードに組み込み可能
- Architectソフトウェア(無料)── エディット・パッチ共有
3つのモデル展開:One / Two / Three
ID:X Floorは3サイズ展開というのもユニークなポイントです。
One(215×68×155mm / 1.33kg)は最小構成で、ペダルボードの一角に収まるサイズ感。
エクスプレッションペダルもエフェクトループもないけれど、アンプモデルとエフェクトの中核機能は全部入っている。「とりあえず足元に一台」という人に最適ですね。
Two(315×68×173mm / 2.07kg)はエクスプレッションペダルが搭載されて、ワウやボリュームペダルをリアルタイムで操作できる。
ライブでの表現力がグッと広がります。
Three(397×68×195mm / 2.88kg)はエフェクトループとMIDI Thruが追加される最上位。
外部エフェクターとの組み合わせや、他のMIDI機器との連携がしたい人向け。
どのモデルでも3kg未満に収まっているのは地味にすごい。
Quad Cortexが1.6kgとはいえエクスプレッションペダルは別途必要だし、Helix Floorは6kg超え。持ち運びの気軽さは確実にID:X Floorの武器です。
ISF(Infinite Shape Feature)とは何か
Blackstarを語るうえで外せないのがISFです。
これはEQセクションに組み込まれた連続可変ノブで、回しきった片側がアメリカンアンプ的なカリッとした高域とタイトな低域、反対側がブリティッシュアンプ的なミドルの太さと暖かさ、という感じで音の方向性がスムーズに変わります。
他のモデラーだと「Fender系のモデル」「Marshall系のモデル」と別々に用意されていて、その間の音色は出しにくいわけですが、ISFはその中間領域を無段階で探れる。
Blackstarの特許技術で、これが搭載されているのはBlackstar製品だけです。
実機のBlackstarアンプに触ったことがある方ならわかると思いますが、ISFをちょっと動かすだけでアンプの性格がガラッと変わるんですよね。
「In The Room」テクノロジーとCabRig
もうひとつの注目が「In The Room」テクノロジーです。
フロアモデラーって、ヘッドホンやPA直でモニタリングしたときに「スタジオで録った音」に近い音は出せても、「目の前にアンプがあって、そこから音が出ている感覚」は再現しにくいという課題があります。
Blackstarはこの「部屋で鳴っている感覚」を再現するために、CabRigというIRベースのキャビネットシミュレーションと組み合わせた独自のアプローチを取っています。ワールドクラスのインパルスレスポンスをベースにしつつ、空気感やダイナミクスの即応性を加えている。
「スピーカーの前に立っているような生々しさ」がどこまで出せるか、ここがこの製品の真価を測るポイントだと思います。
パワーバルブレスポンス:EL84 / EL34 / 6L6
地味にうれしいのがパワーバルブレスポンスの切替機能です。
EL84はVOX AC30的なコンプレッション感のある中域、EL34はMarshall的な攻撃的なミッドと歪み、6L6はFender/Mesaのようなヘッドルームの広いクリアな出音。
実際のアンプでパワー管を差し替えるのは大変(バイアス調整もいるし)ですが、デジタルならノブひとつで切り替えられる。
しかもこれがアンプモデルとは独立して設定できるので、たとえば「Blackstarオリジナルのクランチモデルに6L6のヘッドルーム」みたいな、実機ではあり得ない組み合わせも試せます。
Amptonモデルについて
アンプモデルは全12種で、そのうち6つがBlackstarのオリジナル設計、残り6つが「Ampton」と呼ばれるアイコニックアンプの再現モデルです。
Blackstarのオリジナル6種は、もともと実機のIDシリーズやHT、St.Jamesなどで培われてきた音色がベースだと思われます。
特にBlackstarのハイゲインは元Marshall設計者(Bruce Keirら)のDNAが入っていて、JCM系とも違う独特のミッドの詰まり方が特徴的。
Ampton6種の詳細は公式には明示されていませんが、おそらくFender / Marshall / Vox / Mesa / Dumble / Soldano あたりのクラシックなアンプをカバーしていると推測できます。
「グラッシーなクリーンからハイゲインの轟音まで」と公式が謳っているので、レンジは広い。
モデル数は12種と、Line 6 HelixやBOSS GX-100と比べると控えめですが、ISFとパワーバルブレスポンスの組み合わせで実質的なバリエーションはかなり広いはずです。
操作性:ノブドリブンで直感的
大型のカラーディスプレイ……ではなくOLEDディスプレイとノブによるダイレクト操作、というのがBlackstarの設計思想です。
タッチスクリーンではなくノブでパラメータを直接触れるので、ライブ中に足元をチラッと見て「あ、ここ」とすぐ回せる。
メニューの深い階層に潜らなくても基本的な音作りが表のノブだけで完結する設計は、実機のアンプに近い感覚で使えるということですね。
35種以上のエフェクトも、パネルから直接エディットできるのでPC不要でスタンドアロンでの音作りが完結します。
もちろん、深い作り込みがしたいときは無料のArchitectソフトウェアでPC接続エディットも可能。コミュニティとのパッチ共有にも対応しています。
USB-Cオーディオインターフェース機能
USB-C接続でそのままオーディオインターフェースとして使えるのも見逃せないポイントです。
DAWに接続してそのまま録音できるので、宅録派には重宝する機能ですね。モデラーとオーディオI/Fを別々に用意しなくていい。
競合との比較:どこにポジショニングされるか
ID:X Floorが面白いのは、価格帯と機能のバランスでうまい隙間を突いてきたところです。
Line 6 Helix Floor(6kg超・実売15万円前後)やNeural DSP Quad Cortex(実売20万円前後)はフラッグシップとして完成度が高いけれど、価格も重量もヘビー。
逆にBOSS GX-100やLine 6 HX Stompはコンパクトだけれど、エクスプレッションペダルやエフェクトループは別途用意が必要だったりする。
ID:X Floorはその中間、特にOneの実売3万円前後という価格帯は「初めてのフロアモデラー」としてもかなり手を出しやすい。Threeでも3kg未満で9V駆動なので、既存のペダルボードに追加するという使い方もできます。
もちろん、モデル数や機能の絶対量ではHelixやQuad Cortexに及びませんが、「アンプメーカーが設計した音の説得力」と「ISFというオンリーワンの音作り機能」は他社にない武器です。
サウンドチェック(YouTube)
実際のサウンドはこちらの動画で確認できます。
まとめ
Blackstar ID:X Floorは、アンプメーカーならではの「音の説得力」を持ったフロアモデラーです。
ISFによるアメリカン〜ブリティッシュの無段階シフト、EL84/EL34/6L6のパワーバルブレスポンス切替、「In The Room」テクノロジーによる空気感の再現。
これらはBlackstarだからこそ実現できた機能で、他のモデラーにはない独自の切り口です。
3サイズ展開で、ミニマル派からフル機能派まで選べるのも親切。特にOneの軽さと価格は、初めてモデラーを導入するギタリストにとってハードルがかなり低いと思います。
特にブリティッシュアンプサウンドを求めるプレイヤー、そして「モデル数よりも一つ一つの音の質」を重視するプレイヤーにとっては、最有力候補になるでしょう。
